公開日 2025年05月16日
令和6年度の市民集団健康診査結果で、高血圧(140/90㎜Hg)の判定だった方は、25.6%で、およそ4人に1人の割合が「高血圧」でした。
「血圧は測定するたびに変わる。どれが本当かわからないので高くても気にしない」、「若い頃から高血圧だが今まで何も起きていないから気にしない」などの声をよく聞きますが、高血圧を放っておくと動脈硬化が進み、心臓の病気や脳卒中、腎臓病、認知症などの命にかかわる病気につながります。
血圧は常に変動している
血圧は食事摂取、会話、歩行など日常動作によって変動します。また、1日全体としても昼間より夜間に血圧が低下し、早朝に再上昇する日内リズムがあります。年間を通してみると、冬の時期(12月から2月)には血圧が高くなり、7月から8月の夏には血圧が低くなります。夏と冬では収縮期血圧で10mmHg程度変化すると言われています。そのため、常に変動する血圧を全体的に下げて、「高い血圧レベルでの変動の状態から、低いレベルで変動している状態に変える」ことが大切です。
高血圧には自覚症状がない
著しい高血圧では、頭痛、嘔吐、視力の低下(眼底の浮腫、出血)、意識障害などを生じる場合がありますが、通常の高血圧ではそのような症状が起こることはありません。症状がないからといって、高血圧を放置すると、突然、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気になることがあるほか、徐々に腎機能が低下して透析になってしまうことがあるので早めに「かかりつけ医」に相談することが大切です。
高血圧が起こす病気
- 脳血管(一過性脳虚血発作、脳梗塞、脳出血、認知機能障害)
- 心臓(狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全)
- 腎臓(腎障害、腎不全)
- 末梢動脈等(末梢動脈疾患、動脈の硬さ、動脈弾性)
家庭血圧を測定しよう
生活リズムに応じて、どんな時間帯や行動時に血圧が上がりやすいか、血圧をコントロールする上で、家庭血圧の値を知ることが大切です。家庭血圧はストレスや運動などの影響を受けにくく、毎日測定できるため1回1回の測定のばらつきが少ない等の理由で、高血圧治療ガイドライン2019では「家庭血圧を指標として、降圧治療を実施する」ことを推奨しています。
家庭血圧測定のポイント
- 上腕血圧計がおすすめ。
- 1日2回(朝・夜)測定する。
朝:起床後1時間以内(朝食、服薬前)
夜:就寝直前(入浴や飲酒の直後は避ける) - トイレを済ませ、いすに座って1、2分たってから測定する。
- カフは心臓と同じ高さに巻く。
- 薄手のシャツ1枚なら着たままでもよい。
- 基準値を超えることが続いたら、血圧測定値の記録を持って、かかりつけ医に相談する。
血圧の基準値
正常血圧の基準値(mmHg)
収縮期 | 拡張期 | |
家庭で測定 | 115未満 | 75未満 |
高血圧の診断基準(降圧治療の対象)(mmHg)
収縮期 | 拡張期 | |
家庭で測定 | 135以上 | 85以上 |
降圧目標
家庭血圧 | |
75歳未満の人 脳血管障害患者 冠動脈疾患患者 CKD患者(蛋白尿陽性) 糖尿病患者 抗血栓薬服用中 |
125/75mmHg未満 |
75歳以上の高齢者 脳血管障害患者 CKD患者(蛋白尿陰性) |
135/85mmHg未満 |
参考)日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
高血圧にならないための生活習慣6つのポイント
下記の6つのポイントを組み合わせて行うことで、降圧が期待できるといわれています。
また、子どもの頃から生活習慣を整えることで、高血圧は予防できます。
- 塩分を適量にしましょう。1日あたりの食塩摂取量の目標は、男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧の方は6g未満です。
- 1日350g以上の野菜摂取と果物を積極的に食べましょう。ただし糖質の多い野菜や果物の摂り過ぎによる糖分の過剰に注意が必要です。
- 適正体重の維持をしましょう。普通体重はBMI18.5から25未満です。
- 運動を習慣にしましょう。有酸素運動が効果的です。
- アルコールは適量にし、週に2日程度は休肝日を設けましょう。適量はビール500ml(中瓶1本)、日本酒1合、焼酎1/2合、ワイングラス2杯です。
- 禁煙 受動喫煙も高血圧の原因です。
5月17日は「高血圧の日」
日本高血圧学会と日本高血圧協会では、5月17日を「高血圧の日」に制定し、高血圧に関する啓発活動に取り組んでいます。
毎月17日は減塩の日
特定非営利活動法人日本高血圧学会は毎月17日を「減塩の日」と制定しました。
減塩は自分でできる生活習慣病予防の1つです。
平成28年度県民健康・栄養調査結果によると、1日あたりの栃木県民の食塩摂取状況は男性10.7g、女性9.1gでした。1日あたりの食塩摂取量の目標と比較すると、男性3.2g、女性2.6g多く摂取している状況です。次に紹介する減塩のポイントを参考に、日ごろの食習慣を見直してみましょう。
減塩の効果
減塩の程度と収縮期血圧程度を調べた報告では、平均として減塩1g/1日ごとに収縮期血圧が約1㎜Hg減少するとの報告があります。減塩の程度や食塩感受性によっても差はありますが、効果がみられ始めるまでに1か月くらいかかることもあります。
塩分を控えるための12ヶ条
1.薄味に慣れる
調味料の味になるべく頼らない。塩分計を用いて、自分の味を確認するのもよい。
2.漬物・汁物の量に気をつけて
漬物や汁物は食べる回数と量を減らし、麺類を食べる時は、汁を残すようにする。
3.効果的に塩味を
献立にはいろいろな味付けを利用し、塩は食品の表面にさっとふりかける。
4.「かけて食べる」より「つけて食べる」
しょうゆやソースなどは、かけて食べるより、つけて食べる。
5.酸味を上手に使う
レモン、すだち、かぼすなどの柑橘類や酢など酸味を上手に使う。
6.香辛料をふんだんに
とうがらしやコショウ、カレー粉などの香辛料は塩分調節の強い味方となる。
7.香りを利用して
ゆず、しそ、みょうが、ハーブなどの香りのある野菜、海苔、かつおなどを加える。
8.香ばしさも味方です
焼き物にする、炒った胡麻やくるみなどで和えるなど、調理に利用する。
9.油の味を利用して
揚げ物、油炒めなど、油の味を利用して食べる。胡麻油やオリーブオイルなど。
10.酒の肴に注意
酒の肴に合う料理は意外に塩分が多く含まれているため、少量にする。
11.練り製品・加工食品には気をつけて
かまぼこ、薩摩揚げなどの魚の練り製品やハムやベーコンなどの肉の加工食品。
12.食べすぎないように
せっかくの薄味の料理でも、たくさん食べれば塩分の量もカロリーも多くなる。